和竿の歴史とその特徴

和竿は江戸時代中期にその形態が完成したと言われ『江戸和竿』とも呼ばれています。泰地屋東作の発想とされています。カーボンロッドに代表される科学の流れが強い現代において、その最先端を行く最新のロッドにも対等、使い方次第では上回ることも可能です。先人の知恵、日本が生み出した文化は素晴らしいものです。
和竿を使ってみると、その使用感や魚が掛かったときに感じる感覚は、何物にも代え難いものです。手、そして腕に伝わる感覚が科学の粋を極めた竿では決して味わえないものなのです。ベテラン釣り師がよく言う「アタリ」も、実際に和竿を使い初めて味わえるものだと思います。

魚聖の和竿考

和竿考・・・和竿とは“和(なごみ)”の心

少なくとも私は、先人達が百数十年の永きに渡り築き上げてきた和竿こそが日本人の釣り師の心であり和竿の真髄と考え、和竿の“和”は“なごみ”の和と理解しております。また、近年の船竿全般に、やたらと短いワンピースロッドが目立つのも不思議です。竿には目的とする対象魚に最適な調子と共に、竿の長さも必要となってきます。万人が普通に釣りをしていて、突然の大物にも対応できる反射的対応時間のコンマ何秒を可能にするのも、竿の長さが描くストロークの余裕です。従って、ヒラメ竿なら2.7m、コマセダイの竿なら3.0mは最低限必要と思うのは、私も多くの船長達も同意見です。然るに“軽さ”を前面に謳った調子無視の短竿こそが“無用の長物”と言えるかもしれません。

天然素材の和竿について・・・“和竿”と“竹竿”は違う

和竿とは目的の釣魚に最適な“調子”を有し、かつ美的にも十分耐えうる竿で、「美しい!」と感じられる竿です。竹竿とは単に“竹”で作り上げた竿(と言えるのでしょうか?)で、調子も工芸的美的センスにも欠ける“物”でしょう。和竿とは“和の心”を忍ばせた竿で、持つこと、釣ることに“和(なごみ)”を覚えるような竿です。
和竿とは自然素材の“竹”が原料です。使い方次第では曲がりもするし、無茶な使い方や負荷を掛けると折れもします。当然、釣り人の釣りセンスが問われ、近年全盛のカーボンロッドに比べれば遥かに厄介な代物です。反面、多くのベテラン釣り師が体感的に「やはり和竿はいいよね。一味も二味も違うよ。」と語ります。これは日本人が長きに渡り、竹という天然素材をこよなく愛し、その良さを十分に体感してきたのと同様、竿の素材としての竹も長年の先人の英知から生まれた遺産と言えます。
現在の和竿は確かに高価です。ほぼ100%が手仕事であり工芸的にも優れた物も多くあるものの、中には「これは?」と首を傾げたくなるような竿が、有名竿師作成の竿よりも高額で販売されている現実もあります。しかし値段の如何に関わらず、何れの竿も釣り道具であることに変わりはありません。和竿は今や釣り師のステータスでもありますが、単なる飾りではありません。しっかりと心を込めて使い込み、竿と釣り人が一体になったときに初めて竿はその人の手の一部、腕の延長として更なる釣趣を味あわせてくれることでしょう。



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